DOG DAYS 12話感想 世界との別れ、そして約束を
※ちょこちょこ追記を下の方でしてます
もはや言葉で語れることがどれだけあるだろうか。
正直まとまっていない感情のまま13話を迎えたいという気持ちすらある。
フロニャルドでの物語は全話までで収束した感があり、ここからの2話はただフラットに受け止めるだけでいい。
行きて帰りし物語の、その最後を。
とはいえ書きたい欲求も湧いてくるのだから、いろいろ模索しつつ、つらつらと。
散漫な感想になってしまったが、そんなないまぜな気持ちがあらわれたのかもしれない。
■なめた構図と秘密の覗き見
今回最も目についたのは、なめた構図ではないだろうか。
なめた構図とは、被写体よりも手前にある物体を同じ画面に収めた構図のことである。
この構図の演出意図は様々であろうが、今回この構図が使われていたのは、まず学院、そしてシンクとリコとの会話のシーンであることに注目したい。
これらは全て「秘密の会話」のシーンなのだ。
なめた構図を用いることによって、あたかも秘密の会話を物陰から覗き見ているかのような印象が生じているのだ。
このピンポイントでの演出によって、「秘密」が「秘密」としての強度を作中で保たれている。
■手を降ることは
人物の動作で多かったのは、手を降ることだろう。
最初のシンクたちの凱旋、Bパートでのシンクの訪問、これらのシーンでシンクは手を振り、そして振られている。
この動作は人物としての意図は歓迎・訪問の挨拶であるが、シンクとの別れがフォーカスされた今回においては、まるで別れの挨拶のように機能しているのだ。
手を振ることが否応なく別れを予感させる。
お礼参りのように見えるのシンクの訪問が、刻一刻と迫る別れに向けて感情を高めていくのだ。
■取り落とすこと
別れを予感させるのはそれだけではない。
今回、物を取り落とす描写が3回も出てきたのだ。
以前から言っているように、この作品はキャッチすることが重大な意味を持つ。
この描写が繰り返されることで、この作品の転回が示され、不安を煽り、どうしようもなく別れの到来を告げる。
実際、何かを落としてしまう描写がこれまでにどれだけあっただろうか。
(3話で風呂にシンクが落ちてしまったシーンをそのように捉えることができるが、その場合直後にミルヒをさらわれてしまうという事態になったのは見逃してはならない)
(また、10話でシンクが落とした妖刀は、通常以上の意味で「大人」であるブリオッシュとユキカゼが処理をした。これは担当すべき人間が事案を対処したと言える)
まず第一に、フリスビーをキャッチできないミルヒ。
第二に、リコが必死になる横で落ちる積み上げられた本。
そして第三に、ベールが躓いてひっくり返したジュースである。
このジュースに関しては、シンクとガウルの決着を文字通り「水に流す」ことになったのも言及しておく必要があるだろう。
取り落とされたのは、宝剣であり、ミルヒとのやりとりであり、知識・技術であり、リコの必死な思いであり、戦いの決着である。
これらを落としたままでいいのだろうか。
否、勇者であるならば、この作品で今まで示されてきたシンクであるならば、これらを落としたままで居るはずがない。
これら描写は別れを告げるものであるが、逆説的にシンクがなんとかすることを期待させてもいる。
それだけの信頼を寄せるに価することを、シンクはこれまでやってきたのだから。
■やはり、花
また、作品を通した描写として、またしても花があらわれた。
ライブでまたしても衣装が変わってもやはり花があしらわれたミルヒもそうである。
そして何より、シンクが子どもから貰った花の首飾り。
それと同時に語られる、シンクはフロニャルドから何も持ち帰れないということ。
シンクは花の首飾りを持ち帰れない。
花とはすなわち、フロニャルドそのものである。
これに関しては以前の記事を参照してもらいたいが、フロニャルドが花畑であるという解釈は概ね正しいと思われるし、13話においても花には注目するべきだろう。
■残す物
シンクは何も持ち帰れないとしても、フロニャルドに残していくことはできる。
今回出てきた懐中時計は素直に受け取ればその伏線であるし、物体以上のものをシンクはすでに残していると言えるだろう。
そういう意味では子狐が気になる存在である。
時計という部分に注目すれば、シンクが取り落としてしまうのは日々の記憶、経験であり、時計はその象徴として捉えられるだろう。
■この日々を
シンクがフロニャルドで過ごした16日間の経験。
13歳の少年の、少しだけ変わった日々。
これが、行きて帰りし物語としてのDOG DAYSが描いてきたこと。
その出会いと別れ。
それがこの物語の終着点。
こうした人々との絆の大切さが描かれてきたからこそ、別れが悲しいのだ。
誰かがいてくれること。
その暖かさ。
ミルヒとレオの絆であり、二人の成長を見守る大人たちという構図。
今回の、Aパートの終わりからの流れがとても美しかった。
シンクを巡る人々が描写され、シンクの俯瞰に至る。
シンクが人々を訪れ、そしてまた夜に眠られずにいるシンクが映される。
シンクを中心としてコミュニティ・日常がしっかりと描かれている。
そのコミュニティ。
描かれるのは個人との別れではなく、コミュニティとの別れ。
だから、この作品は単に個人ではなく世界を描いてきた。
モブの顔の書き込みの差がそのままシンクとその人物たちとの関係性として現れているのも、コミュニティの描き方としてとても割り切っているし、一つの真理であるようにも思える。
コミュニティを描いた作品だということは、この作品を語る上で重要なことだろう。
果たしてどのようにコミュニティとの別れが描かれるのだろうか。
■そして約束を
次回のサブタイトル「約束」。
思い返せば、シンクはミルヒと約束を重ねてきたのだということがわかる。
1話の勇者として戦うこと。
3話では、話をすることを約束し、7話では朝の散歩を、また、再び召喚することをミルヒが約束した。
そして今回、ミルヒを忘れないという約束を交わす。
再召喚はミルヒが約束し、記憶の保持はシンクが約束した。
この約束をどうやって果たすのか。
今回の最後にシンクはすべての人にむけて、再び勇者として訪れることを約束した。
それは、その後のカットである互いを見るシンクとミルヒに象徴されるように、二人の交わした約束に収束される。
他に交わした約束といえば、3話でのリコがした元の世界に戻すという約束と、11話でのロランの「戦う理由を忘れないで欲しい」というものだが、この2つも召喚と記憶に関係するものであり、やはりシンクとミルヒの約束に収束されているのだ。
勇者と姫様の約束がどうか果たされんことを。
そう願いながら、次回を待つことにしよう。
※コメントでのやりとりで気が付きましたが、この展開とEDの歌詞とのシンクロがすごいです。2番以降もそうですし、Fullでもとてもいい曲なので是非そういう気持ちで聞いてみて欲しいですね
※これまでの感想でまだまだ触れていない点はありますが、何より「星」の解釈と閣下に関することは次回には触れられるようにしたいですね。
単純に難しいんですが……。
特に星は取っ掛かりがなかなか。
星詠みは、シンクが帰還した後も行えることとかもね。
あとね、あとね、エクレがとても可愛いのに触れられなかったから、何とかしたいですね!
ガウルとシンク同じベッドなのかよ、うおお! とかも。
先に風呂入ってこいよ→同じベッド……っておい!
大事ですよこれは。
いいですか、5話においてガウルはシンクに「名前を覚えろよ」と言っているのです。
これは今回のミルヒとの約束に先んじているわけです。
ここに、ガウル真ヒロイン説の根拠が生じたと言えましょう!
もはや言葉で語れることがどれだけあるだろうか。
正直まとまっていない感情のまま13話を迎えたいという気持ちすらある。
フロニャルドでの物語は全話までで収束した感があり、ここからの2話はただフラットに受け止めるだけでいい。
行きて帰りし物語の、その最後を。
とはいえ書きたい欲求も湧いてくるのだから、いろいろ模索しつつ、つらつらと。
散漫な感想になってしまったが、そんなないまぜな気持ちがあらわれたのかもしれない。
■なめた構図と秘密の覗き見
今回最も目についたのは、なめた構図ではないだろうか。
なめた構図とは、被写体よりも手前にある物体を同じ画面に収めた構図のことである。
この構図の演出意図は様々であろうが、今回この構図が使われていたのは、まず学院、そしてシンクとリコとの会話のシーンであることに注目したい。
これらは全て「秘密の会話」のシーンなのだ。
なめた構図を用いることによって、あたかも秘密の会話を物陰から覗き見ているかのような印象が生じているのだ。
このピンポイントでの演出によって、「秘密」が「秘密」としての強度を作中で保たれている。
■手を降ることは
人物の動作で多かったのは、手を降ることだろう。
最初のシンクたちの凱旋、Bパートでのシンクの訪問、これらのシーンでシンクは手を振り、そして振られている。
この動作は人物としての意図は歓迎・訪問の挨拶であるが、シンクとの別れがフォーカスされた今回においては、まるで別れの挨拶のように機能しているのだ。
手を振ることが否応なく別れを予感させる。
お礼参りのように見えるのシンクの訪問が、刻一刻と迫る別れに向けて感情を高めていくのだ。
■取り落とすこと
別れを予感させるのはそれだけではない。
今回、物を取り落とす描写が3回も出てきたのだ。
以前から言っているように、この作品はキャッチすることが重大な意味を持つ。
この描写が繰り返されることで、この作品の転回が示され、不安を煽り、どうしようもなく別れの到来を告げる。
実際、何かを落としてしまう描写がこれまでにどれだけあっただろうか。
(3話で風呂にシンクが落ちてしまったシーンをそのように捉えることができるが、その場合直後にミルヒをさらわれてしまうという事態になったのは見逃してはならない)
(また、10話でシンクが落とした妖刀は、通常以上の意味で「大人」であるブリオッシュとユキカゼが処理をした。これは担当すべき人間が事案を対処したと言える)
まず第一に、フリスビーをキャッチできないミルヒ。
第二に、リコが必死になる横で落ちる積み上げられた本。
そして第三に、ベールが躓いてひっくり返したジュースである。
このジュースに関しては、シンクとガウルの決着を文字通り「水に流す」ことになったのも言及しておく必要があるだろう。
取り落とされたのは、宝剣であり、ミルヒとのやりとりであり、知識・技術であり、リコの必死な思いであり、戦いの決着である。
これらを落としたままでいいのだろうか。
否、勇者であるならば、この作品で今まで示されてきたシンクであるならば、これらを落としたままで居るはずがない。
これら描写は別れを告げるものであるが、逆説的にシンクがなんとかすることを期待させてもいる。
それだけの信頼を寄せるに価することを、シンクはこれまでやってきたのだから。
■やはり、花
また、作品を通した描写として、またしても花があらわれた。
ライブでまたしても衣装が変わってもやはり花があしらわれたミルヒもそうである。
そして何より、シンクが子どもから貰った花の首飾り。
それと同時に語られる、シンクはフロニャルドから何も持ち帰れないということ。
シンクは花の首飾りを持ち帰れない。
花とはすなわち、フロニャルドそのものである。
これに関しては以前の記事を参照してもらいたいが、フロニャルドが花畑であるという解釈は概ね正しいと思われるし、13話においても花には注目するべきだろう。
■残す物
シンクは何も持ち帰れないとしても、フロニャルドに残していくことはできる。
今回出てきた懐中時計は素直に受け取ればその伏線であるし、物体以上のものをシンクはすでに残していると言えるだろう。
そういう意味では子狐が気になる存在である。
時計という部分に注目すれば、シンクが取り落としてしまうのは日々の記憶、経験であり、時計はその象徴として捉えられるだろう。
■この日々を
シンクがフロニャルドで過ごした16日間の経験。
13歳の少年の、少しだけ変わった日々。
これが、行きて帰りし物語としてのDOG DAYSが描いてきたこと。
その出会いと別れ。
それがこの物語の終着点。
こうした人々との絆の大切さが描かれてきたからこそ、別れが悲しいのだ。
誰かがいてくれること。
その暖かさ。
ミルヒとレオの絆であり、二人の成長を見守る大人たちという構図。
今回の、Aパートの終わりからの流れがとても美しかった。
シンクを巡る人々が描写され、シンクの俯瞰に至る。
シンクが人々を訪れ、そしてまた夜に眠られずにいるシンクが映される。
シンクを中心としてコミュニティ・日常がしっかりと描かれている。
そのコミュニティ。
描かれるのは個人との別れではなく、コミュニティとの別れ。
だから、この作品は単に個人ではなく世界を描いてきた。
モブの顔の書き込みの差がそのままシンクとその人物たちとの関係性として現れているのも、コミュニティの描き方としてとても割り切っているし、一つの真理であるようにも思える。
コミュニティを描いた作品だということは、この作品を語る上で重要なことだろう。
果たしてどのようにコミュニティとの別れが描かれるのだろうか。
■そして約束を
次回のサブタイトル「約束」。
思い返せば、シンクはミルヒと約束を重ねてきたのだということがわかる。
1話の勇者として戦うこと。
3話では、話をすることを約束し、7話では朝の散歩を、また、再び召喚することをミルヒが約束した。
そして今回、ミルヒを忘れないという約束を交わす。
再召喚はミルヒが約束し、記憶の保持はシンクが約束した。
この約束をどうやって果たすのか。
今回の最後にシンクはすべての人にむけて、再び勇者として訪れることを約束した。
それは、その後のカットである互いを見るシンクとミルヒに象徴されるように、二人の交わした約束に収束される。
他に交わした約束といえば、3話でのリコがした元の世界に戻すという約束と、11話でのロランの「戦う理由を忘れないで欲しい」というものだが、この2つも召喚と記憶に関係するものであり、やはりシンクとミルヒの約束に収束されているのだ。
勇者と姫様の約束がどうか果たされんことを。
そう願いながら、次回を待つことにしよう。
※コメントでのやりとりで気が付きましたが、この展開とEDの歌詞とのシンクロがすごいです。2番以降もそうですし、Fullでもとてもいい曲なので是非そういう気持ちで聞いてみて欲しいですね
※これまでの感想でまだまだ触れていない点はありますが、何より「星」の解釈と閣下に関することは次回には触れられるようにしたいですね。
単純に難しいんですが……。
特に星は取っ掛かりがなかなか。
星詠みは、シンクが帰還した後も行えることとかもね。
あとね、あとね、エクレがとても可愛いのに触れられなかったから、何とかしたいですね!
ガウルとシンク同じベッドなのかよ、うおお! とかも。
先に風呂入ってこいよ→同じベッド……っておい!
大事ですよこれは。
いいですか、5話においてガウルはシンクに「名前を覚えろよ」と言っているのです。
これは今回のミルヒとの約束に先んじているわけです。
ここに、ガウル真ヒロイン説の根拠が生じたと言えましょう!
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